墨アーティスト 海老原露巌

彼は数百年の歳月を経た希少な「乾隆帝墨(中国の清朝第六代皇帝時代のもの)或いは日本の古墨」をテーマに従ってあらかじめ磨って蓄えておいた「宿墨」と合わせ、最もふさわしい色を探し出す墨アーティストである。その墨色は千変万化である。
時には限りなく淡い青であり、ある時は漆のような深い黒を呈す。
墨色は紙、筆、気候や湿度によって微妙に異なる顔を見せるが、彼はその偶然性に委ねる事をせず、試行錯誤を繰り返し、墨色を自らの支配下に置く。
この経験に裏打ちされた特別な墨が、イマジネーションと折り合わさった時、瑞々しく、あえかなる色彩を放ち、海老原の作品は描かれるのである。
この墨色への強烈な拘りが、彼を「墨アーティスト」たらしめる由縁であろう。
彼曰く「一気呵成に書き上げ、筆を置くまでの瞬くような時間の中で、「書」という芸術にどこまでいのちを与える事ができるのだろうか」